便秘とは
便秘とは、本来であれば排泄すべき便を、十分な量を快適に出せない状態と定義されます。以前より排便の量が減ったという場合だけでなく、排便時に強くいきまなければならないケース、便が硬く排便時に痛みを伴うケース、排便後もスッキリしないケース、また目安として3日以上排便がないケースも便秘と捉え、受診を検討しましょう。
特に何週間も便秘気味の状態が続いている方、食習慣に気をつけても便秘が改善しない方、便秘以外に何らかの症状が出ている方は、お早めにご相談ください。
便秘の種類別の原因
機能性便秘
もっとも多いタイプです。
生活習慣、ストレス、加齢などを原因として、大腸・直腸・肛門の働きが低下し、便秘になります。
弛緩性便秘
加齢、運動不足などによって大腸を動かす筋肉が衰え、蠕動運動が弱まることで、便が適切に肛門へと進んでいかず、便秘になります。
痙攣性便秘
主にストレスを原因として大腸の蠕動運動の連続性が低下し、便がスムーズに進んでいかないために便秘になります。
直腸性便秘
通常、便が運ばれてきた時に反応する直腸のセンサーが反応せず、便意が起きないために便秘になります。センサーが反応しない原因には、排便の我慢の習慣化、温水洗浄便座の使い過ぎによる神経の感度の低下などが挙げられます。
器質性便秘
大腸がん、手術などによる癒着・腸閉塞、潰瘍性大腸炎、クローン病などの病的な問題を原因として起こる便秘です。まずはこれらの病気を治療する必要があります。
症候性便秘
甲状腺機能低下症による大腸の蠕動運動の低下、神経損傷・糖尿病による神経の働きの低下によって便秘になります。生理・妊娠などによる女性ホルモンの変化によって起こる便秘も、ここに分類されます。
薬剤性便秘
抗うつ剤や抗コリン薬、咳止めなどの一部の薬の副作用として起こる便秘です。
受診の際には、お薬手帳をお持ちください。
便秘の症状
以下のようなケースは便秘と捉え、当院にご相談ください。
- 食習慣を見直しても便秘が改善しない
- 便秘以外に症状がある
- 便が3日以上、出ていない
- 排便時に強くいきむ必要がある
- 排便時に腹部、肛門に痛みがある
- 排便後も便が残っている感じがある
- 腹部に張りがある
- おならのにおいがきつい
要注意!便秘で危険な症状
以下のような便秘は、特に危険性が高くなります。できるだけ早くご相談ください。
- ある日突然、便が出なくなった
- 5日以上、便が出ない
- 激しい腹痛、発熱を伴なう
- 便秘と下痢を繰り返している
- 便がいつも細い
- 腹部にしこりがある
- 便に血液、粘液が混じっている
便秘が続くとどうなる?
便秘は下痢と比べると、社会生活に影響が出ることが少ないためか、受診が遅れがちです。
しかし、何らかの病気を原因として便秘になっている場合、その放置は病気の悪化・進行を招きます。
また食生活などを原因として便秘が続いている場合も、放置することで病気を引き起こすということもあります。
すでに何らかの病気を
発症している場合には、
悪化・進行する
便秘が症状として現れる病気としては、大腸がん、大腸ポリープ、過敏性腸症候群、腸閉塞、甲状腺機能低下症などが挙げられます。
特に大腸がん、腸閉塞は、命にかかわる病気です。一刻も早い治療が必要です。
便秘を放置することで、
病気が引き起こされる
ことも
便秘によって硬い便が出る、繰り返しいきむことで、切れ痔や便秘を発症することがあります。
また、虚血性大腸炎、大腸憩室症、S状結腸軸捻転、直腸潰瘍、直腸脱、大腸穿孔、腹膜炎などの病気を合併することがあります。
便秘の診察と検査
便秘でお悩みの場合には、以下のような診察・検査を行い、診断します。
診察
便秘が続いている期間、排便の頻度、便の量・形・色・においなど、可能な範囲でお伺いします。検査の選択、治療方針の決定に役立つ大切な情報ですので、詳しくお聞かせください。
食習慣、服用中の薬、既往歴などもお伺いした上で、お腹の触診・聴診を行います。
血液検査
下痢の原因となる内科的疾患の有無、内臓機能の数値、感染や炎症の有無などを調べます。
大腸カメラ検査
大腸の病気が疑われる場合には、大腸カメラ検査を行います。当院では、内視鏡専門医が大腸カメラ検査を行います。苦痛を最小限に抑え、安心して受けていただけるよう努めています。
疑わしい病変が見つかった時の生検・病理検査、がん化のおそれのある大腸ポリープ切除にも対応します。
便秘の治し方
便秘そのものの治療には、以下のようなものがあります。
ただし、検査によって病気が見つかった場合には、その治療が必要です。
生活習慣の改善
水分・食物繊維不足、栄養バランスの乱れが認められる場合には、その改善のための指導を行います。適度な運動、十分な睡眠、入浴習慣なども、便秘改善に有効です。
また、排便習慣の改善にも取り組みます。便意を我慢せずすぐトイレに行く、便意がなくても毎朝トイレに行き便座に座る(3分座って、出ない時は切り上げます)といった対策が有効です。
薬物療法
主に下剤を使用します。下剤は大きく、大腸の粘膜を刺激する「刺激性下剤」と、便をやわらかくする「非刺激性下剤」に分けられます。
刺激性下剤は即効性が高い一方で、長期の使用により耐性ができ、下剤が効きにくくなる・その後の便秘治療に支障が出るというデメリットがあります。
患者さんによって使い分けますが、当院では原則として非刺激性の下剤を使用していきます。
即効効く!?便秘の解消法
簡単にできる便秘の解消法をご紹介します。効果には個人差がありますが、便秘が気になった時には一度お試しください。
お腹のマッサージ
ヘソを中心に、直径10~15cmくらいの円を描くように、指先で撫でるようにマッサージします。円は、自分でお腹を見下ろして時計回りに描いていきます。
食物繊維の摂取
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。便秘解消のためには、その両方をバランスよく摂取することが大切になります。
水溶性食物繊維が豊富な食品:リンゴ、キャベツ、にんじん、トマト、みかん など
不溶性食物繊維が豊富な食品:ごぼう、穀類、芋類、キノコ類、大豆製品 など
小まめな水分の摂取
水分は小まめに飲むようにしましょう。必要量は活動量、新陳代謝の量などによって異なりますが、「のどが渇いたと感じる前に飲む」ことで水分不足を解消できます。起床後や就寝前などは、白湯がおすすめです。
適度な有酸素運動
ウォーキング、軽いジョギングなどの有酸素運動は、副交感神経を優位にし、排便を促進する効果が期待できます。また、身体をひねる動作が加われば、腸に刺激を与え、その活動を促進します。
便意を感じた時に
我慢しない
仕事中など、便意を感じてもすぐにトイレに行けないという場面がありますね。ただ、繰り返しの便意の我慢は、直腸の感覚を低下させ、便秘を招きます。できる限り、我慢せずすぐトイレに行きましょう。朝に排便する習慣を身につけておけば、仕事に邪魔される心配も少なくなります。