肛門科

肛門科で対応する症状

肛門科で対応する症状おしりを拭いたときに紙に血が付着したり、おしりからいぼのようなものが脱出することはありませんか?
それは、もしかすると痔の症状かもしれません。「日本人の半分は痔主である」というように、肛門疾患を抱えている患者さんは多くおられます。一方で、肛門科の診療ができるクリニックは全国的に少ないため、症状があっても適切な治療が受けられなかったり、「デリケートな部分なので、恥ずかしくてなかなか相談ができない。」という思いから受診をためらう方が多くおられます。

当院では、大腸肛門領域におけるこれまでの豊富な経験を活かし、肛門部の出血や痛み、いぼの脱出など、おしりのお悩みに幅広く対応可能です。「血便が出たけれど切れ痔なのか大腸の病気か分からない」といった際に内視鏡検査・肛門鏡検査を含む多彩なアプローチができる点も、消化器内科・肛門外科の両方を標榜する当院ならではの強みです。
また、プライバシーに最大限配慮した診察室で診療を行っております。
女性医師の診察日もございますので、同性医師の診察を希望される方もご安心ください。
以下のような症状がございましたら、お気軽に当院にご相談ください。

排便時の出血

  • 便に血液が付着していた
  • 茶褐色、黒っぽい便が続いている
  • 便に血液、粘液が混じっている
  • トイレットペーパーや下着に血液が付着していた
  • 便器が真赤になるほどの出血

肛門部の痛み

  • 排便時に肛門が痛む
  • 排便後も痛みが続く
  • 常に肛門がズキズキ、チクチクする
  • 便が硬くなり排便が辛い
  • お尻を拭く時に痛い

肛門から脱出するものが
ある

  • いぼのようなものが常に出ている
  • 排便時だけいぼが出る
  • 押すと引っ込むいぼがある
  • いぼから出血している
  • 硬いいぼがある

下着が汚れる

  • 漏らしたつもりがないのに、便が付着している
  • 粘液が付着している
  • 血液が付着している
  • 膿が付着している
  • 繰り返し便失禁してしまう

肛門科で対応する疾患

当院では、主に以下のような肛門疾患に対応します。

内痔核(いぼ痔)

肛門の皮膚と粘膜は、歯状線で隔てられています。このうち、内側の粘膜で生じるいぼ痔を、「内痔核」と言います。
慢性的な便秘や下痢などの便通異常、出産、立ちっぱなし・座りっぱなしなどを原因として発生します。
近年ではコロナ禍によるリモートワークの増加や、トイレの際にスマホ等の視聴により排便時間が長くなってしまうことで「いぼ痔」を悪化させてしまう患者さんもおられます。
症状としては、排便時に“いぼ”いぼがおしりから脱出すること排便時の痛み、出血が挙げられます。が挙げられます。進行すると、いぼが排便時に脱出いぼいぼを指でする、押し戻しても肛門内に戻らずない、常に脱出した状態となり、排便時に痛みや出血を伴います。ているといったふうに進行します。脱出したいぼが擦れるなどすると、痛みや出血もひどくなります。また、炎症がひどくなるといぼが膨れて大きくなり、さらに肛門内に戻りづらくなるという悪循環に入ってしまうことがあります。
初期の場合は炎症を抑える作用のある塗り薬によって内痔核が小さくなり症状が和らぐケースが多いです。中等度の場合は「ジオン注(痔核硬化療法)」といって内痔核に特殊な薬剤を注射して退縮させる方法を選択します。ジオン注でも治癒困難な場合は手術による内痔核切除の適応となります。
上記のように、内痔核は重度になる前段階であれば「切らずに治す」ことが十分可能な疾患ですので、気になる症状等がある場合はお早めにご相談ください。

外痔核(いぼ痔)

「外痔核」は、先述した歯状線の外側にできるタイプのいぼ痔です。外痔静脈叢(肛門のクッションの役割を果たす、細かい静脈の集合)が、しこり様に変化したものです。
硬い便や便秘、立ちっぱなし・座りっぱなしなどを主な原因とします。体の免疫力やストレスとも関連しており、季節の変わり目や生活環境の変化にともなって発症する患者さんがおられます。
症状としては、痛み、腫れ、出血が挙げられます。特に、外痔静脈叢内に血栓(血の塊)を形成する「血栓性外痔核」は強い痛みや出血を引き起こします。
外痔核は基本的には炎症を抑える作用のある塗り薬によって治癒しますが、血栓が大きい場合や痛みがひどい場合、出血が続く場合は痔をメスで切開して血栓を除去したほうが早く治癒するケースもあります。治療法の選択については、患者さんの仕事のスケジュールや家庭環境も考慮しつつ柔軟に対応させて頂きますので遠慮なくご相談ください。

裂肛(切れ痔)

硬い便、繰り返しの下痢などを原因として、肛門が切れてしまった状態です。
排便時の痛み、少量の出血が見られます。切れ痔が起こると、傷が治る過程で線維化(硬くなること)が起こり、肛門が細くなります。切れ痔→線維化を繰り返すことで肛門が狭くなり、より痛みが出やすくなるというケースが少なくありません。切れ痔により肛門が狭くなると、狭窄→排便困難→便秘→切れ痔→狭窄という悪循環に陥ります。強い狭窄に至った場合には手術が必要となります。そうならないために早めの治療開始が大切です。
治療は、きずの治りを促進する作用のある塗り薬を使いつつ、飲み薬による排便コントロール(便の硬さの調節)を行います。入浴によって肛門を清潔に保ち、肛門括約筋の血流を促進することが重要ですが、ウォシュレットの使用はきずの治りを妨げたり、肛門部の粘膜がむくんで新たな切れ痔ができる原因となりますので可能な限り避けてください。

肛門周囲膿瘍と痔ろう(あな痔)

肛門周囲膿瘍は、肛門管から細菌が侵入・感染し、直腸や肛門の周りに膿を形成する病気です。
初期症状は肛門周りの皮膚の痛み、腫れですが、進行すると膿が大きくなり骨盤周囲の鈍痛や背中の痛み、発熱が見られることがあります。
肛門周囲膿瘍と診断したら、できるだけ速やかにメスによる切開をして膿を排出することが原則です。治療せずに放置することで広範囲の蜂窩織炎(皮下組織に生じる細菌感染症)や「フルニエ壊疽」と呼ばれる陰部・肛門周囲の重篤な感染症に移行する危険性もありますので、肛門周囲に上述のような異変を感じたらなるべく我慢せず早めにご相談ください。

肛門周囲膿瘍が治癒すると、多くは肛門内から肛門周囲の皮膚に向かって瘻管(ろうかん)と呼ばれるトンネルを形成して痔瘻となります。痔瘻の症状には、肛門の周りに出現するしこりとそこからの持続的な膿の排出、痛み、かゆみ、発熱等があります。
痔瘻は自然に治癒する可能性は稀で、症状を繰り返す場合は手術による治療を考慮します。
また、肛門周囲膿瘍・痔瘻の背景に糖尿病やクローン病(内部リンク)といった治療を要する疾患が隠れていることがありますので、発症を繰り返す場合は血液検査・尿検査・内視鏡検査等を用いた精密検査により病状が悪化する前にしっかりと対応させて頂きます。

肛門感染症

ウイルスや細菌などの病原体の感染によって起こる肛門の病気の総称です。
具体的には、肛門カンジダ症、尖圭コンジローマ、肛門ヘルペス、肛門周囲膿皮症、肛門梅毒などが挙げられます。
出血や痛み、かゆみ、できもの、腫れなど、感染症が疑われる症状に気づいた時には、お早めに当院にご相談ください。

ウォシュレット症候群
(温水洗浄便座症候群)

ウォシュレット症候群(温水洗浄便座症候群)は、ウォシュレット(温水洗浄便座)の使い過ぎによって引き起こされるとされる肛門周辺の健康問題です。温水や強い水流による物理的な刺激が原因で、肛門周辺に不快感、かゆみ、炎症、時には痔などの症状を引き起こします。
排便後にウォシュレットを使用する際は、強い水流を避け、使用時間をなるべく短くして頂くようお願いします。

肛門科の流れ

1問診

問診お悩みの症状について、詳しくお話しください。「いつから」、「どのような」症状があるかについて詳細に教えていただくことで、その後の診察や病気の診断を円滑に行うことができます。
プライバシーに十分に配慮した診療を行いますので、ご安心ください。

この後の診察では、女性患者さんの場合は必ず同性スタッフが立会い、不安や羞恥心の軽減に努めさせて頂きます。

2視診

診察台に横になり下着をおろして頂き、肛門の状態を診察いたします。
肛門周囲に隆起、赤み、腫れが無いかを観察します。

3触診

触診視診に引き続き、触診を行います。手袋をつけ、潤滑ゼリーを塗った指で肛門周囲、肛門管内を調べます。
しこりの有無やその範囲、圧痛、分泌物の性状を把握します。

4肛門鏡検査

肛門鏡検査肛門鏡という筒状の器具を使用し、肛門管内を観察します。
肛門内部の様子を実際に目で見ますので、便・血液・粘液の様子をそのままの状態で観察できる他、いぼ痔や切れ痔の位置や程度を正確に把握できます。
触診の際に肛門管の方向や狭窄の有無を確認していますので、肛門鏡の挿入はスムーズにいくことが多いですが、切れ痔などで肛門部に痛みを伴う場合は小児用の細い肛門鏡の準備もございますのでご安心ください。

5診断・説明

診断・説明ここまでの情報をもとに、病気を診断し、治療方針についてご説明します。肛門はなかなかご自身では目視しづらい部分ですので、適宜イラスト等を用いたわかりやすい説明を心がけさせて頂きます。

6治療

治療治療方針にご同意いただけましたら、治療へと入ります。肛門疾患は命に関わるものが少ない一方、治療のゴールが患者さんによって異なる場合が多々ございます。

いくつかの選択肢を提示しつつ、患者さんのご意思を最大限尊重して治療に当たらせていただきます。

肛門科で行う痔の治療

肛門周囲腫瘍・痔ろう

肛門周囲膿瘍は、メスによる切開をして膿を排出することが原則です。
全身の感染症に移行するリスクに配慮し、抗生物質を使用する場合もございます。

痔ろうにつきましては、自然に改善することは稀です。
症状を繰り返す場合は手術による根治的治療をおすすめさせて頂きます。痔ろうの手術には下記のようなものがあります。

切開開放術

主に、後方にできた痔ろうに対して行う手術です。
トンネルを切除し、開放したままにします。傷が治癒する過程で、トンネルが消失します。再発リスクの少ない治療法です。

シートン法

トンネルにゴム状の紐を通し、定期的にきつく締めていくことで、トンネルを肛門へと移動させ、最後には消失させます。
治療期間は長くなってしまいますが、肛門の変形を防ぐことのできる治療です。

くり抜き法
(括約筋温存術)

トンネルをくり抜き、その入り口を閉鎖します。
肛門機能を温存しやすい一方で、後方の痔ろうにはあまり向きません。

内痔核(いぼ痔)

痛みや排便時の出血が軽度の場合、炎症を抑える作用のある塗り薬によって内痔核が小さくなり症状が和らぐケースが多いです。中等度の場合は後述の「ジオン注(痔核硬化療法)」によって内痔核を退縮させる方法を選択します。
ジオン注でも治癒困難な場合は手術による内痔核切除の適応となります。

ジオン注(痔核硬化療法)

ジオン注(痔核硬化療法)肛門鏡を使って内痔核を直視しつつ、出血と脱出を改善するための硫酸アルミニウムカリウム、その働きを調整するためのタンニン酸を主成分とする薬剤を痔核に注射します。約15〜30分で実施できます。
限局的に血流が低下することで痔核は小さくなり、1~4週間ほどをかけて元の位置へと戻ります。
鎮静剤を使用しなくても実施できますので、その日のうちにお車や自転車の運転もしていただけます。
注射後の日常生活の制限は特に無く、お仕事も通常通り可能ですが、飲酒は出血のリスクを増加させますので数日間は控えていただくようお願いします。注射後、発熱や肛門部の痛みといった副作用が現れることがありますので、2日以内にフォローアップのための受診をお願いしております。症状がある場合は適宜抗生物質や鎮痛剤によって対応させていただきます。ジオン注の効果が固定化するには3〜6ヶ月程度を要します。治療後、2週間、1ヶ月、3ヶ月程度を目安に通院して頂き、痔の状態を伺わせて頂きます。

裂肛(切れ痔)

治療は、きずの治りを促進する作用のある塗り薬を使いつつ、飲み薬による排便コントロール(便の硬さの調節)を行います。立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける(休憩やストレッチを取り入れる)こと、入浴によって肛門を清潔に保ち、肛門括約筋の血流を促進することも重要です。消化器疾患が便秘の原因となっていることも多いため、その検査・治療も必要に応じて行います。

坐薬・軟膏の投与

座薬、軟膏を使って、切れてしまった皮膚の治癒を促します。
治療と並行して、食物繊維を豊富に含む食事の摂取や、十分な水分摂取、適切な排便習慣を身につけることも、症状の改善に寄与します。排便をスムーズにするため、下剤を併用することもあります。